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柵の番を割り当てられたのは、たぶん何年かぶりだと思う。他のみんなには数ヵ月くらいで順番が回るのに、わたしがここに来ると危ないから、ってリシャールが気を利かせてくれていたみたいだった。
でもね、リシャール。そういう気遣いをしてもらっても、わたしの空への憧れは止められないんだよ、なんかごめんね?
心のなかでそう謝っても仕方がないので、わたしはやっと回ってきた順番を楽しむように空を見続けた。空を見ているのはこんなに楽しいのに、どうしてみんな空を怖がるんだろう?
青々と澄んだキャンバスにクロッキーで描かれたみたいに走るすじ雲とか、時間帯によって色を変える空模様とか、とても綺麗なのに。夕方の紫やピンク色に染まった雲とか、空と同じ茜色に焼かれていく街並みとか、わたしの好きなものだらけなのに。
こんなものが現実にあるんだ、なんて毎回思いながらいつも見上げていた空に、こんなにも近付けるのに、柵の監視はみんなからやりたくないと忌避されている。
「ソレイユさんも、そうですか?」
「そうねぇ、私の場合は星見を生業にしているから嫌ってばかりもいられないけど、怖いには怖いかしらね……」
「そうなんですかぁ……」
「シエルちゃんみたいな子が珍しいんじゃないかしら……。そこまで空に焦がれている人なんて、見たことないわね」
「そうなんですか?」
「そうね……」
そんな会話のあと、一旦休憩に入ってしまったソレイユさんを見送ってから、わたしはぼんやりと空を見上げていた。
みんなは、外の世界とか気にならないのかな……?
だって、1、2日あれば歩いて回れてしまうこの街が世界のすべてだなんて、狭すぎる!
そんな苦情めいたことを考えながら遥か遠くまで澄み渡る青空を見ていたとき、何かが光るのが見えた。
「え、なにあれ?」
そう言っている間にも、それはどんどん近付いてきて。
「え、え、え、えっ!!?」
ドォォォォォォン…………
凄まじい音と地響きと共に、その“何か”はわたしのすぐ目の前に落ちてきた……っ!!!
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