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「ぅ、うぅぅ、」
「あっ、目が覚めた!? 大丈夫!?」
空から降ってきた変な機械。そこから助け出した、見たことのない男の子。ぐったりと目をつぶっていたけど、ようやく目を覚ましてわたしのことを見た。それで「あの、ここは……?」と尋ねてきた。
「あ、えっとここは……?」
「あの、ここは――」
「もしかして、俺……、え、死……!?」
慌てたような顔でキョロキョロと辺りを見回して、それから自分の胸とか腕とか、とにかく身体中を触って、あれこれ確かめている様子のその子に、とにかく一旦深呼吸だけしてもらって、まず自分がちゃんと生きていることを確認してもらった。
すると、自分が死んだんじゃないか――とは言わなくなったけど、代わりにとんでもないことを言い始めた。
「すごい、本当にあったんだ、空の島……!」
「空の、島……?」
一緒に男の子に付き添っていたソレイユさんも、なんのことかわからないというように首を傾げている。だって、“空の島”なんて、そんな当たり前のものにどうしてそこまで目を輝かせて……あっ。
もしかして、という期待があった。
確かにこの男の子が来たことで、わたしは自分たち以外に人がいることを知った。でも、それはせいぜいこの街の近くに別のところがあるのかな――くらいにしか思っていなかった。
でも、もしかして。
もしも、そんなことが本当にあるのなら……!?
祖父に見せてもらった本の中身も、今なら少し思い出せる。
『かつて、人は皆大地の上に暮らしていた。大地とは、彼方まで広がる岩と土によって作られた広大な土地である。地形に高低の差はあるが、そこには転落の心配もないし、森からは水や獣の立てる音が絶えず聞こえて、食料の心配もない。
何よりも、地上にはこの空の島では見られない未知に満ちあふれていた。砂で覆われた灼熱の地や、天を目指すように高々と聳える山、更には人間よりもずっと大きな動物も息づいていた。
だが、我々は世界から切り離された。』
幼い頃祖父に見せてもらった本――今もわたしが探している“禁書”に書かれていた言葉。
もしかしたら、この人は、“大地”で暮らしている人なのかも知れない。そう考えると、胸が弾むようだった。
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