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「いらっしゃい!」
元気な声が店内に響いた。
田村主任は、ママの目の前のカウンター席に腰を下ろした。その左横に俺も座る。入口に近い方が、侵入者を監視出来る。
アイスコーヒーを二つ、主任が勝手に頼んだ。
見れば、ママはかなり若い。二十ニ、三才ぐらいだろうか。けっこう美人な方に入る。主任はこの人が目当てなんだなと思った。
「ニャー」
足元に視線を下げた。猫の瞳が黄色く光る。
猫が姿を現した。
黒猫だった。
俺を気に入ったのか膝の上に、飛び乗ってきた。
ヤバイ! これじゃ身動き取れない。
カチャと音がして、一人の客がはいってきた。
若い女性だった。彼女は、入口近くのテーブルについた。
ママがオーダーを受けにいった。
「いらっしゃいませ」
戻ってきたママに主任が、
「ママ。占いをお願いします」
といった。
「はい。少し待ってね」
ママは受けたオーダーを若い女性に差し出してから、
「こっちへ、いらして」
と田村主任に呼びかけた。
店の奥に設置されている占い専用の椅子に主任が座る。
向いに腰を下したママが、占い用の道具をテーブルの上に置く。
俺も興味が湧いてきたので、立ち上がった。その拍子に黒猫は膝から飛び下り、カウンターの中へ隠れた。
俺は、占ってもらっている最中の田村主任の横に立って並んだ。
――うっ!
あの凄まじい殺気に似た感覚をまたも背後に感じた。
さっきと同じ、強烈な視線。
けど、背後には、若い女性しかいない。
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