1.潜入捜査官

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「いらっしゃい!」  元気な声が店内に響いた。  田村主任は、ママの目の前のカウンター席に腰を下ろした。その左横に俺も座る。入口に近い方が、侵入者を監視出来る。  アイスコーヒーを二つ、主任が勝手に頼んだ。  見れば、ママはかなり若い。二十ニ、三才ぐらいだろうか。けっこう美人な方に入る。主任はこの人が目当てなんだなと思った。 「ニャー」  足元に視線を下げた。猫の瞳が黄色く光る。  猫が姿を現した。  黒猫だった。  俺を気に入ったのか膝の上に、飛び乗ってきた。  ヤバイ! これじゃ身動き取れない。  カチャと音がして、一人の客がはいってきた。  若い女性だった。彼女は、入口近くのテーブルについた。  ママがオーダーを受けにいった。 「いらっしゃいませ」  戻ってきたママに主任が、 「ママ。占いをお願いします」  といった。 「はい。少し待ってね」  ママは受けたオーダーを若い女性に差し出してから、 「こっちへ、いらして」  と田村主任に呼びかけた。  店の奥に設置されている占い専用の椅子に主任が座る。  向いに腰を下したママが、占い用の道具をテーブルの上に置く。  俺も興味が湧いてきたので、立ち上がった。その拍子に黒猫は膝から飛び下り、カウンターの中へ隠れた。  俺は、占ってもらっている最中の田村主任の横に立って並んだ。  ――うっ!  あの凄まじい殺気に似た感覚をまたも背後に感じた。  さっきと同じ、強烈な視線。  けど、背後には、若い女性しかいない。
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