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プロローグ 前編
・・・僕が、育った街。
大きな鉄筋に囲まれ、大きな隔離施設となっている。
天井には、空と言う物が描かれたのが在る。
僕が生まれるずっと前に、起きたとされる戦争で、避難所として用意されたのが、この街。
人口は、ニ千人弱。一人一人に小さな家を用意されているが、五百人ずつエリア分けされている。
その他の施設は、中心部にある広場に、
病院と百名程が入れる大きな食堂のみ。
娯楽と言う物は、存在せず。会話のみが許され、ある程度の生活以外は、
一切願う事さえ許されぬ街。
僕を含むこの街の人たちは、“蝉の民”と呼ばれている。
「ノヴァは、・・・さ。外の世界に、何処までも広がる空が在って、人間が自由に暮らせる場所が在るって信じる?」
僕に、話しかけて来た少女は、綺麗な黒髪を靡なびかせ、天井からゆっくり青い瞳で、僕に目線を移した。
「僕は、あると想うよ。大人達は、ないっていうけどね。」
少女は、そっか。っと嬉しそうに微笑んだ。
彼女の名前は、ユーリ。
僕より一つ年上の女の子で、ユーリと僕以外は、皆大人。
戦争を経験して、この街に来て、外の世界を否定する。
「いつか綺麗な街で、綺麗な服を着て、美味しい物を食べるのが、私の夢なの。」
ユーリは、再び天井を眺め少し悲しそうに呟いた。
その表情を見た僕は、思わず心に想った事を口にしていた。
「・・・僕が。いつか連れてってあげる。」
ユーリの瞳は、再び僕に、映った。
照れ隠しをするように、右手で顔を隠しユーリは、ありがとうと呟いた。
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