アクアマリンの想い

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 猫に導かれるようにして、小路を歩いていた彼女は、切り立った崖の上に辿り着いた。そこには場違いにも思える一軒の店がポツンと佇んでいる。  濃い緑色に塗られた扉には、蔦模様の彫られたすりガラスが組み込まれ、飴色のドアノブが付いている。真っ白な壁にレンガ作りの床。ドアの上部には小さな文字で『Antique and Costume jewelry』と書かれているが、店名はない。壁には正方形の小さなはめ殺しの窓が二つあり、店内の様子を覗くことができた。  彼女がそっと窓から中を覗くと、ショーケースに並べられた美しい宝石の数々と、それらに寄り添うように置かれた、二匹の黒い子猫の置物が見えた。瞳にはそれぞれ、海のように深いブルーと、鮮やかな新緑色のグリーンの宝石が嵌めこまれ、美しく光り輝いていた。
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