75人が本棚に入れています
本棚に追加
Last Episode.
In the distant future.
・・・・・★
幼い兄妹が深い森を歩いていた。
夢中になって茸採りをしているうちに、大人たちから近づくことを禁じられた古い遺跡に迷い込んだ。最もそこは普段から子供たちの隠れた遊び場になっていて、兄妹もそれほど警戒してはいなかった。
それでも誰も立ち入らない場所はある。そこには一目で見渡すことができないほど巨大な木が倒れていた。苔に覆われ、朽ちて穴だらけになったその大木は多くの虫や動物が棲みついて、いつ崩れるかもわからない。そして倒れる以前は天にも届く高さであっただろうこの木のことを、この世に在らざるものと畏れる気持ちが皆の間にあったのだ。
しかしまだ小さい妹は畏れることなく木に遊んだ。やがて大人では入ることの難しい木の根の隙間をすり抜けて、秘密のような空間を見つけると、うれしくなって兄を呼んだ。
「お兄ちゃん、ここ、隠れ家みたい!」
妹は兄が来るまでに、半分以上が土に埋もれた不思議な箱にヒトが入っているのを見つけた。窓の泥と苔を払い、なかを覗き込んで思わず息を飲む。そこに入っていたのは、白い髪に白い肌を持つこれまで見たことがないほど美しい顔をしたヒトだったからだ。
「この木は危ないから、来たらダメだって言われてるだろ!」
「早くこっちに来て!ヒトがいる!」
「はあ?何言ってるんだよ」
根の隙間は、兄にとっては狭かった。妹は兄の手を引き、無理になかへと引き入れた。兄は妹と同じように窓を覗き込むと、目を丸くした。
憂いに満ちた顔だった。目の縁はきらきらと輝く星を散らしたように光り、それは涙のようにも見えた。窓を叩いて話しかければ今にも目を覚ますような気がして、すぐにでもそこから出してやりたいと思ったが、無意識のうちに畏怖の念が湧き起こり、体が思うように動かない。ヒトの形をしていても、とてもヒトとは思えなかった。
「なんだかとっても悲しそう。でも、すごく綺麗なヒトだよね。女のヒト?それとも男のヒト?」
「その前に、本当にヒトかな…」
畏れる兄をよそに、小さな妹はひとつのことに思い当たって顔を輝かせた。
「もしかしたら、神様かも!」
・・・・・★
The history of this star will continue.
最初のコメントを投稿しよう!