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スフェンは俺の一言に頷いて涙を飲み込むと、鼻をすすって微笑んだ。
*
大勢の大人に囲まれたスフェンの後ろについて遺跡の中枢に降りると、視界に入りきらないほど大きな楕円の物体があった。銀色の外装は鈍く輝き、ドームに劣らぬ巨大な建造物のようなそれは、とても宇宙を飛べるとは思えない。あまりにも想像とかけ離れた形に圧倒された俺に構わず、大人たちは迷うことなくスフェンをその一角に導いた。
スフェンはずっと無表情だった。大人たちに言われるまま、つるりとした装甲へ右の掌をぴたりとあてると、そこから網の目のような光が走る。それは毛細血管のように広がり、船の隅々まで複雑な光の線が走った。
大人たちが歓声を上げると同時に空気が抜けるような音がして、スフェンの目の前にぽっかりと穴が開いた。奥から恭しくタラップが現れ、見計らったようにスフェンの足元まで伸びると、真っ暗だった内部に明かりが点く。
「行こう」
スフェンは俺の手を取り、臆することなくタラップを上った。
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