Episode.5 暁

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広大な船の内部はとても一日で回りきれる規模ではなく、おまけに扉のすべてが施錠されていて、それを解錠するにはいちいちスフェンの右手なり左手なりを必要とした。おかげでコックピットに辿り着くまで丸一日がかかり、船を完全に起動できたのは、遺跡に入って五日後のことだった。 船の構造が明らかになるにつれわかったのは、ドームとは比べものにならないほど高度な技術で造られたこの船を操るために、まだまだ多くの研究時間が必要だということだった。そのためドームから多くの技術員たちが遺跡へやって来ることになったけど、俺とスフェンはいつまで経ってもドームに帰ることを許されなかった。 「またいつスフェンの力を借りることがあるかわからないからね。でも、ここに子供がスフェンひとりじゃ可哀想だ。暁、君はスフェンの友人として、彼のケアをしてあげなさい」 香麗も呼んでほしいという提案は却下された。香麗は体力的な面で不安があるからだと言われたものの、きっと三人になったらまた逃げられると思ったのかもしれない。今頃はもう元気になっているだろう香麗のことを考えると、なんだか申し訳ない気分になった。 遺跡のなかであれば自由にしていいとは言え、外に出ることは許されず、出口を塞がれた空間にただいるだけの日々は軟禁に近い。ドームにいれば課されるはずのカリキュラムもなく、暇を持て余して鬱屈した俺の思いを察したのか、最初に船を探索しようと言い出したのはスフェンだった。
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