Episode.5 暁

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「大丈夫、まだ、僕の言うことには逆らえないはずだから」 スフェンはそう言って、決められた時間に指定の場所へ戻ることを条件に、自分たちが船へ自由に出入りできる権限を取り付けた。大人たちは決していい顔をしなかったけど、不満が爆発して脱走されることを心配したのか、渋々、俺たち二人だけで船に入ることを許可した。 船の内部は三層構造になっている。一番上の一層目が重要なコックピット、二層目は居住スペース、底にある三層目は動力や食料などを積む保管庫であることは、最初に一通り回ったので知っていた。今はコックピットに大勢の大人が集中していて、居住スペースや保管庫にはそれほど人がいない。 ピリピリした雰囲気の技術員たちが働くコックピットをうろうろするのは、大人にとっても俺たちにとってもいいことじゃない。人もまばらな居住スペースと保管庫のほうが、探索するにはもってこいだった。 それに下の二層はあまりに広く、最初に入ったあのときだけで、すべてを回りきれているとは思えない。まだ隠された部屋があるかもしれず、もし施錠されていたとしても、スフェンがいれば開かない扉はないのだ。 「じゃあ、最初は二階層の端から端まで行ってみるか」
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