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「ビスケットキューブかも。何味かな」
「でも千年前のだろ。食えんのか?」
「大人は大丈夫だって言ってたよ。当面はこれで凌ぐんだって」
「それ、本当かよ……」
「食べられるか試してみようか」
「いや、止めとけって」
これだけ隙間なく詰められていたら、一個無くなっただけでも俺たちの仕業だとすぐわかる。普段は遠慮がちで大人しいくせに、妙な所で大胆な奴だ。
「じゃあ少し休憩しようよ。ちょっと疲れたし、お腹も空いてきたし…」
スフェンがぶつぶつ言いながらその場に座り込み、後ろに手をついたときだった。スフェンの掌が触れた床に、複雑な網の目の光が走っていく。それは、スフェンが最初に船の扉を開けたときと似たような光だった。
「スフェン!」
スフェンは何が起こったか理解していないようだった。ぽかんとした顔で俺を見ていたが、床から妙な音がして、自分が穴に落ちると理解した途端、慌てて俺の手を取った。俺は何かに掴まろうと咄嗟に腕を伸ばしたが、その手は空を切り、スフェンもろとも暗い穴のなかに落ちて行った。
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