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「その可能性もあるけど、どうかな」
二人であれこれ考えたところで、当然答えは出てこなかった。そのうちこの種が何なのかより、一向に出口が見つからないこの場所からどうすれば出られるのか、ということのほうが差し迫った問題になってきた。広い上に息苦しく、出口を探して歩き回るほど、ますますお腹も空いてくる。
「やっぱり、さっきキューブ食べておけばよかった。このままここから出られなかったらどうしよう」
「定時までに戻らなければ、きっと大人が探しに来るはずだ」
僕も暁もへとへとになって座り込むと、しばらく黙り込んだままだった。暗闇のなかでぼうっと食べ物のことを考えながら、敷き詰められた種をいたずらに手でいじっているうちに、一粒の種が目に留まった。
「そうだよ、種は植物の実なんだから……」
親指大の種を拾い上げ、硬い殻を歯で割って剥いてみれば、出てきたものは休憩時間の栄養補給に出されるナッツにそっくりだった。心なしか香ばしい匂いもする気がして思わず口に入れようとすると、暁が慌てて止めた。
「おい待て!千年前ので、しかも生だぞ?」
「全然黴臭くないし、一粒だけだよ」
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