Episode.6 スフェン

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信じられない顔をした暁を無視し、僕はたまらずぱくりと頬張った。コリコリと噛み砕けるそれは予想通りの歯ごたえで、口のなかにじわりと油分が広がる。千年の時を越えても、栄養はしっかり蓄えられていたらしい。 「美味しいし、一粒でもお腹いっぱいになるよ?」 「何でコンミートは食えないのに、訳のわからないやつは食えるんだ」 「だって、このままだと飢え死にしちゃうかもよ」 僕は同じ種を探すと殻を剥き、暁に差し出した。暁は僕の掌からそれを摘み上げ、じっと睨みながら「食わない」「食えない」を繰り返していたものの、一向に助けが来ないままじりじりと時間が経つと、意を決したように口に含んだ。最初は警戒したのか舌先でころころと転がしているようだったけれど、やがてコリコリと噛み砕く音が聞こえてきた。 「悔しいけどうまい。ひょっとして、蒔くんじゃなくて非常食か?」 「ふふ、そうかもね」 拍子抜けした暁の顔を見て安心すると、それまで空腹に支配されていた頭が冴えてくる。暗闇でも視界が開け、遠くに突き当りの壁があるのを見つけた。そこに梯子が掛かっていると気づいて、思わず立ち上がった。 「暁!出口あるかも!」    *
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