Episode.6 スフェン

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定時から随分遅れて指定の場所に着いた僕と暁は大人たちから散々叱られ、当分の間、船内探索を禁止することを言い渡された。ペンライトには発信機がついていたのだから探しに来ればよかったんじゃないですかと言うと、あの穴に落ちていた間は位置情報が機能していなかったらしい。 「こっちだって、モニターから君たちの信号が消えて焦ったんだ」 その間どこにいたのかとしつこく聞かれたけれど、僕と暁は答えなかった。梯子を上ると勝手に出口が開いたものの、それは保管庫に戻った瞬間に跡形もなく消え、ただの床に戻ってしまったからだ。僕がどこの床に手をついたのかも記憶が曖昧で、何より大人も知らない秘密の場所がこの船にあるのだと思うと、僕も暁も少しわくわくしたのだ。 遺跡の一角に設けられた、僕たち専用の檻みたいな場所に戻ったとき、暁は不審そうに僕のポケットをじろじろ見た。バレない程度にしたつもりだったけど、流石は暁だ。ごまかすように笑っても、暁は目を逸らさなかった。 「スフェン、お前、まさかあそこの種持ってきたんじゃ……」 僕は慌てて暁の口を塞いだ。耳元で「内緒にしてて」と囁くと、暁は呆れたような目をしつつ、僅かに頷く。なんだかんだ言っても、暁はやさしい。    * 結局それから船を探索することはできないまま、遺跡へ来てから半年後、僕と暁はドームに戻されることになった。僕の体で設定された鍵の情報を書き換え、もう僕が必要なくなったからだ。
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