Episode.6 スフェン

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扉の鍵がすべて開くようになってしまったら、あの秘密の場所も見つかってしまうかもしれない。そう思ったけれど、種の部屋が見つかったという情報はそれからも一向に入ってこなかった。 ドームに戻ったとき、僕たちを真っ先に出迎えたのは香麗だった。久しぶりに見る香麗は、前よりもっと綺麗になった気がする。始めは怒ったように唇を結んでいたのに、みるみる顔を歪めて大粒の涙を零した。 「もう会えないかもしれないと思ってた」 そう言って、ためらうことなく暁に抱きついた。 僕は戸惑う暁を横目に、半年ぶりに戻ったドームの雰囲気が微妙に変化していることに気がついていた。そこにあったのは暗黙の了解によって管理された前の世界ではなく、僅かに異分子が息づいている気配。 その気配が何なのかわかったのは、遺跡から帰ってきた僕と暁が落ち着きを取り戻した頃のこと。香麗から、船には乗らずこの星に残りたいと考える一部の人々が団体を作って署名を集め、それが認められたという話を聞いた。彼らは他の人たちから、反主流派と呼ばれているらしい。 やっぱり僕だけじゃなかったんだ。皆が皆、この星から出たい訳じゃない。    *    *    * この星を飛び立つ準備が整ったのは、僕と暁が十五歳になる頃だった。
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