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最初はひっそりとしていた、この星に残りたいと願う僅かな人たちも、今でははっきりとその主張を明言していた。だからと言って主流派と対立することはなく、皆が星を飛び立つまでの準備には積極的に協力している。
星に残ることを望む人の多くは壮年や熟年の世代で、彼らの主張は意見の異なる者と争うことではなく、残された自分たちの人生を、自らの思うように選択できる権利だった。
でもこのことは、主流派にしてみればかえって都合がよかった。いくらあの船が巨大でも、全員が乗ったらとても窮屈になることは容易に予想できる。彼らの申し出は、主流派にとって願ってもないことだった。
「じいさんばあさんはどうかしてるよ。この星にいたって死ぬだけだ」
暁はそう言ったけれど、僕は、住み慣れた場所で最期を迎えたいと思う彼らに共感した。でも、それを暁に伝えることはできなかった。この星に残るという誓約文を提出した後も、暁の言うことには曖昧な返事をして笑った。
僕がこの星に残ると言ったら、暁はどんな顔をするだろう。
こっそり誓約文を提出しに行ったとき、それを受け取った大人も驚いた顔をしていた。未成年の提出は僕が初めてで、他に提出する子はいないだろうと言っていた。でも大人は僕の目を見ると、まあ、君にはいろいろと思うところがあるかもしれないね、と続けた。もし僕が権力者の末裔じゃなかったら、船に乗るよう説得されたのかもしれない。
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