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「暁も、コンポークが豚だって知ってるでしょ……どうして食べられるの」
黙々とコンポークを食べる俺を信じられない目で見るスフェンのトレイには、コンポークだけが残されている。大体、コンビーフやチキンは食えるのにコンポークだけ食えないスフェンも大概おかしい。聞けばコンポークのことがあってから、意識して家畜小屋には近寄らないことにしているのだと言っていた。俺はまだ手をつけていないキューブとゼリーをそのままに、すぐコンポークを平らげると、素早くスフェンのトレイと交換した。
「キューブだけじゃ腹が減るから、ゼリーも食っとけ。言っとくけど、これ俺にとっては食物繊維不足なんだからな」
スフェンの顔がぱっと明るくなり、ありがとう、と言ってキューブを頬張った。別にうれしいわけでもないが、ほっとするのはなぜなのか。子供は他にもたくさんいるのに、どうして俺は隣の試験管で生まれたというだけで、マイペースなスフェンの面倒をずっと見ているのだろう。
*
ドームを終の棲家と決めたときから、人類が生きるために必要な、すべてが完璧に続いていくサイクルを作り上げたはずだった。でもこの世で永遠に変わらないものなんて、きっとありえないんだろう。安全だと思われた棲家が壊れるのと同じように、人も壊れる。
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