Episode.4 スフェン

1/3
75人が本棚に入れています
本棚に追加
/81ページ

Episode.4 スフェン

小さい頃から嫌な予感は的中した。良いことは全然当たらないのに、悪いことほどよく当たる。だから遺跡に行くことは、ものすごく嫌だった。入り口の鍵が生体鍵だと聞いたときから。 暁は自分が権力者の末裔だとしても気にしないと言った。やっぱり暁は強い。でも僕は強くないから、夜中にこっそりベッドを抜け出してセコイアに祈る。神様、どうか遺跡の封印が解けませんように。僕が権力者の末裔ではありませんように。 それなのに神様は意地悪だ。まだ十三年しか生きていないけれど、今ほど神様を恨めしく思ったことはない。毎日あんなにきちんとお祈りしていたのに、遺跡の入り口は僕のせいで開いてしまった。 扉が開いた瞬間、大人たちは一瞬呆けたようになると、歓喜して扉に群がった。すると僕を押さえつけていた大人の手が僅かに緩んだ隙に、暁と香麗は僕を大人から引き剥がし、腕を掴んで勢いよく走り出した。 びっくりしたのは、足の速い暁に香麗もちゃんとついてきていたこと。二人は足がもつれて転びそうな僕を引っ張るようにして外に飛び出すと、すぐさま止めてあったバギーに乗ってエンジンをかけた。 「すぐに追いつかれるわよ!」 後ろに乗った香麗が叫ぶと、暁は返事もしないでアクセルを踏む。砂埃を巻き上げてバギーが走り出すと、僕と香麗はげほげほと咳込んだ。 「ちょっと!下手じゃない!」 「馬鹿、わざとだよ」 バギーは勢いに乗って、滑るように砂の上を走る。いつかライブラリのコンテンツで見た『海の波に乗る』というのはこんな感じなのかもしれない。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!