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Episode.5 暁
「スフェンからのご指名だよ。君を最初に船へ入れる約束だってね」
うっすらと肌寒い遺跡の内部では、ドームでもあまり見かけない、偉そうな大人が手下のような部下をぞろぞろと引き連れて歩いていた。肝心の船が見あたらないことを尋ねると、それがあるのは更に下の階なのだという。
「暁!」
見知らぬ大人たちのなかで不安そうにしていたスフェンは、俺の姿を見るなり、ぱっと顔を輝かせて駆け寄ってきた。
部屋から引き摺り出された俺たちは全員別の場所に連れて行かれ、翌日になってもそれぞれどうなったのかわかっていなかった。でもここに来る前、俺だけは香麗に会うことを許されていた。ぐったりしていた香麗は脱水症状を引き起こしていたらしく、今も医務室のベッドにいる。
「香麗の具合が悪いって聞いたんだ」
「もうだいぶ良くなってたよ。俺だけ船に入れるの、すごく悔しがってた」
すると厳しい顔をした大人がつかつかと不機嫌な足音を立てて、俺とスフェンのところへやってきた。
「余計なお喋りはしないように。スフェン、君にはこれからやるべきことがたくさんある。暁、君はスフェンの友人だから特別に許可しているんだ。立場を弁え、邪魔だけはしないでくれ」
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