ピーマンは苦い

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余程自分の作った野菜に自信があるのだろう。不味いわけが無い、という訳か。でも、悔しいことに、初めてピーマンを“悪くない”と思った。 「おいしいです、凄く。」 でもまだ、この料理ではピーマンそのものの味を美味しいと感じる事は出来なかった。肉やソースの存在が大きかった。 今度はもう少し、本当の味を知りたいと思った。   レシピ③ ―天ぷら―  ・縦半分に切ったピーマンを用意。  ・てんぷら粉にくぐらせ温めた油に投入し、揚げる。  ・油分をふき取り完成。醤油などをかけて食べる。 夜遅くに帰宅し、飯の支度を悩んでいた頃にインターフォンが鳴った。弟達との食事を済ませた後で、残りの具材で作った天ぷらを持ってきてくれたらしい。 「こ、この大量の天ぷらは…まさか…。」 「ああ、一昨日冷蔵庫から貰ってったぜ。」  やはりピーマン。確かに、一昨日は“もっと素材本来の味を味わってみたい”なんて思った。思った事は認める。でもそれは口に出した覚えもなければ作って下さいと頼んだ覚えがない。 「醤油、ソース、塩、めんつゆ。俺は塩派。」  並べられた調味料と渡された缶のビールに“後には退けない”と釘をさされ手元に用意された箸を手に取る。 「い、いただきます。」     
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