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おっと、余計な事は言わない方が身の為みたいだ。口を滑らせるごとに一つ、ピーマンが増えていく気がする。
見事な輝きを放っているピーマンの表面。確かに、自画自賛するのも納得できるほどにしっかりとして、ハリのある肉付きだ。仄かに土の香りがすることから、ついさっき採ってきてくれたんだろう。
この人は果たして、苦手なものを克服する為に現れた神様か、自分のピーマンを貶された仕返しを目論むサディストか。
「どうしよう…。」
人生生きてきて、一番困った事かもしれない。このピーマンを作った人間が近場にいるという事実が廃棄する事に対する罪悪感を最高潮に引き上げる。
仕方ない、なにか調べて作るか、と諦めた時、袋の中から三つ、ピーマンが取り上げられた。
「食わせてやる。家で待ってろ。」
三個のピーマンを人質に取られ家で大人しく待つこと約十五分。家のインターホンが鳴った。扉を開けるとやはり、米田さんだった。
「ほらよ。」
手提げ袋を少し開くと漂う香りに自然と腹が空いていく感覚がする。
「炒飯ですか?」
「そうだ。」
タッパー越しの中身には確かに、ところどころ緑色の存在が見える。練り物に混ぜたり、好物に混ぜて知らぬ間に嫌いなものを食べさせる手法。少し見える親切さに感動した。
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