ピーマンは苦い

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 普段から覗き穴など使う習慣もない。鍵をあけ、扉を開くと、勢いよく扉が引っ張られた。 「「こんにちはー!」」  小学生くらいの男の子と女の子が、アパートに響き渡る程の大声で挨拶をしてきた。どこの子供か、などと考えている間にも猪のように突進し、「お邪魔しまーす!」という声が部屋の中へと消えていったのを呆然と見ていた。 「あんた、もう少し用心した方がいいぞ。」  と、言いながらも靴を脱ぎながら部屋に上がろうとしだす非常識極まりない男のジャンパーを鷲掴み制止する。 「ちょ、ちょ、ま、何の用!?」  あまりにも状況を理解させて貰えない事に混乱を極めた。何故昨日知り合ったばかりの男が部屋に来て、小さな子供が俺の部屋でくつろぎ始めているのか。 「あれ、弟と妹。台所借りるぜ。」  話を聞かないどころじゃない。ガン無視。稀にみる傍若無人ぶりに、心を無にした。黙って牛乳を取り出し、床に正座してそわそわと他人の家を堪能している彼の兄弟にココアを入れてやる。  何やら手際よく準備を始めた台所に顔を覗かせた。ひき肉、卵、玉葱、小麦粉…どうやらハンバーグを作ろうとしているらしい。 「兄弟想いなんですね。」 「あ?当たり前だろ。」 「手伝います?」 「いや、いい。あいつらにこれ持ってってくれ。」     
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