【忘れ物】

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それから少年トムくんの大捜索が始まりました。 先程のお客様のお子さんのものにしては、少し壮大なストーリーのようです。 「──トムくんのママが教えてくれました。 それなら今朝のゴミに出しちゃったわ。 大変です、ロンドが暗い暗いごみ収集車の中にぎゅっと押し込められてしまいます。 早く助けなくちゃ!」 「おにいさん」 お嬢さまが声をかけてくれます。 「まだ?」 きっと本を見たいのですね。 「少しだけお待ちを──はい、よろしいですよ」 お嬢さまはすぐさまソファーへ走り寄り、奥様の隣にちょこんと座りました。 身を乗り出して絵本に食い入ります。 「すみません」 急がせたと思ってくれてのでしょうか、奥様が謝ってくれました。 「いいえ、全然大丈夫です」 伝票を仕上げます、連絡先などは後ほど聞きましょう。 でも、お名前くらいは聞いても良いでしょうか。 「あの、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」 「あ、はい、寺崎です、あ、下の名前は私? 娘?」 「お母様でよろしいです」 「ひとみでお願いします」 私はその名前を記しました。 「──ああ、ロンド、ごめんね! 暗くて寒くて寂しかったよね! もうかくれんぼにゴミ箱は使わないから!     
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