【忘れ物】

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トムくんはロボットのロンドをぎゅっと抱き締めました。 心なしかロンドも嬉しそうです。 もう、離れ離れにはならないよ! おしまい」 「あーよかったー!」 お嬢様がほっとしたように声をあげます、弟さんも胸に手を当てて安堵の溜息を吐きました。 「いいご本だったわね。ありがとうございます、持ち主の方にお礼を言わなくちゃ」 「伝えておきます」 寺崎さまは、絵本をそっと目の前のテーブルに置きました。 弟さんがすぐさま手を伸ばそうとしましたが、それはぴしゃりとお叱りになります。 「お友達のよ。返しましょうね」 それをお姉さまである娘さんも真似して叱ります、なんとも可愛いものです。 仮縫いまで3週間を頂き、寺崎さまはお帰りになりました。 さて、絵本の持ち主にご連絡をさしあげませんと。 その前に。 私はその本を手にしていました。 なんとも可愛らしい絵で書かれた絵本です。これを大好きな母親に、臨場感たっぷりに読んでもらったら、本当に幸せな気持ちになると思います。 私はとっくにいい歳になりましたが。 思わずソファーに座り、そのページを捲っていました。 大人でもワクワクしてしまうストーリーです。 トムくんを応援してしまいます──ロンドはあなたに見つけてもらえるのを待っていますよ! 終
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