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「ほぉ~、部下命令ねぇ」
小野寺さんは片眉を吊り上げて、私の人差し指をぎゅっと握った。
「ぎゃあっ」
私のあげた可愛いげの欠片もない叫び声に、フハッと吹き出して笑いだす。
それから、
「お前には敵わねーなぁ」と、大きな手のひらで私の頭を撫でた。
あ……もう、まただ……。
凌輔さんの存在を気にしながらも、その手の重みと温かさに私の心はいとも簡単に揺さぶられてしまう。
「……私に過去と向き合わせてくれたのは、小野寺さんですから……」
ぽつりと呟くと、
小野寺さんは、ふ……と小さく、困ったように笑った。
「原田にここまでお膳立てされたんじゃ、このまま出ていくわけにはいかねーな」
静かに閉まるドア。
小野寺さん……。
余計なお世話だったらごめんなさい。
でも私、きっと間違ったことしてないと思う。
小野寺さんと凌輔さんが、過去と向き合えますように。
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