触れて、はじまる

なんでお前が泣くんだよ

さて、と……。

私は、さりげなく腕時計に視線を落とした。

この後は、ジャズオケ仲間達と新郎凌輔さんによる余興のジャズバンド生演奏！

去年他の友人の余興で演奏したのが大好評で、今回もまたやろう！と仲間内で即決したらしい。

『そろそろ、余興アナウンス入りますね』
『了解。よろしくお願いします』

サービスキャプテン(披露宴進行の取り仕切り)や司会者と、密に状況を確認し合う。

ブライダルプランナーは、結婚式が滞りなく進行しているかを、見守り、気を配り、指示し、そして二人とゲストに常に寄り添う――"総監督"のような役割なのだ。

どんと構えて、頼れる存在であること。

これは私のモットー。

ふと、私は披露宴会場を見渡した。

視線の先にその人を捉えて、ほ……と小さく息を吐く。

披露宴前半、他のお客様の応対が入り姿を見せなかった小野寺さん。

共通の友達で披露宴にも出席している見供(みとも)さんに、手が空いた隙をついて連れてこられたようで。

会場の入り口付近で何やら二人で話をしている様子だった。

よかった。…………間に合って。