上司として

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「まぁ、まだ内示の段階だから、原田の意思を確認したいと思って」 「……え……?……と、転勤……ですか」 「あぁ。5月に新館がオープンする話は聞いてるだろ?」 「……はい、でも」 ……何で私……? そんな私の疑問を察知したのか、小野寺さんが言った。 「人事からオープニングスタッフに適任は居ないかと打診があって、俺がお前を推した」 一瞬、くらりと目眩がした。 小野寺さんが住居や給与の話を続けているけど、ほとんど頭に入ってこない。 わかってる。 正社員という立場で、しかも今は独身で、系列式場への転勤はあって当然ということも。 人事異動は昨日の今日で決まるものではないことも。 それに個人的な感情など含まれるはずがないことも。 だけど……頭ではわかっていても、どうしても小野寺さんから突き放されたような気持ちになって仕方なかった。 …………拒んだのは自分のくせに。
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