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「ほ……ほんとは、私……もっと…………」
射抜くような視線に見つめられて、声が震える。
語尾が小さくごにょごにょとなってしまう。
「……もう一回言って」
「……え」
小野寺さんが、私の腕を掴み返して。
「今の。ちゃんと、もう一回……」
ガチャッ
「美味しかった~」
「ね~!あっ、原田さん!お帰りなさい」
「原田さんお疲れ様です!」
突然スタッフルームのドアが開いて、ぞろぞろとプランナー達が戻ってきた。
ドアの音とほぼ同時に、距離をとっていた小野寺さんと私。
「た……ただいま」
心臓がばくばくしているのを悟られないよう、なんとか平静を装う。
「ちょうど良かった!これ、原田さんの分って料理長が分けておいてくれたんですよ。はい、どうぞ」
後輩プランナーが料理長から預かったタッパーを差し出してくれて、私は「ありがとう」とそれを受け取った。
ちらりと横を見る。
小野寺さんはこちらに背を向けたまま、首筋に手を当てて「ふぅ」と小さく息を吐いた。
片足に重心を寄せた相変わらずモデルのような立ち姿も、今の私は直視できない。
ほんとは、私……もっと触れてほしい。
だって、小野寺さんのことが好きだから。
ギリギリ口先で留まった私の気持ちは、多分もう……小野寺さんにばれてしまっただろう。
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