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「前から思ってたけどその"小野寺マネージャー"っつーの、長ったらしいからいい加減やめねぇ?バックヤードでは普通にサンでいいから」
「そんなこと言うの、小野寺さんくらいですよ」
「堅苦しいのが嫌なだけ。ただし客前ではちゃんと呼べよ。ふ……ぁぁ、あ~眠……」
小野寺さんが拳で口元を覆って盛大な欠伸をしたとき。
プルルル、とコール音が響く。
「お電話ありがとうございます。グランマリアージュ迎賓館、小野寺がお受けいたします」
出たっ! 切り換え、早!
普通マネージャーの立場ともなれば、あまり接客にはつかずに、新しいセットプランの構成や売上管理中心の人も多い。
他の系列式場でも、それが主流だ。
でも、彼は違う。
入れるときはガンガン接客に入るし、こうやって電話だって積極的に取る。もちろん、マネージャー業務も全てこなしながら。
披露宴の時間がおして、次の披露宴まで時間が無いときは、気づいたら流れるような手つきでテーブルセッティングを手伝っていたり。
重い荷物の搬入もイベントの撤収作業も、どこからともなく現れてさっさと片付けてしまう。
この間なんて、朝見かけないと思ったら、経済新聞片手にエントランスの枯れ葉の掃き掃除までしていて。
そういうことが、さも当たり前のようにできてしまう人なのだ。
外面完璧。神出鬼没。フットワークが軽くて、口が悪い、マネージャーらしからぬマネージャー。
それであの成約組数とトップクラスの売上成績……
小野寺さんの背中を見て仕事をしている後輩たちは、みな憧れ、尊敬し、日々奮起させられる。
悔しいけど、この人がマネージャーになってからウチの式場は絶好調だ。
「まさに、"超人"ですね」
「ね……」
スタッフの間でひそかに"超人"なんて呼ばれてることを……多分、彼は知らない。
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