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「……なぁ、目ぇ据わってんだけど」
それきり黙りこんで、ボーッと小野寺さんの顔を眺めていたら、パッパッと目の前で手を振られる。
「酔っぱらいは早く帰って寝ろ」
そう言って財布からお札を取り出そうとしていた小野寺さんに、私は無意識に手を伸ばしていた。
「小野寺さんて、こんなところにホクロあったんだ……」
カウンターにもたれながら、口元ななめ下のホクロを指差す。
「え?あぁ……つーか、毎日顔付き合わせてるのに、今更ここに気づくってお前どんだけ俺に興味ないんだよ」
可笑しそうに笑う小野寺さん。
別に、気づいてなかった訳じゃないですよ。
だって、
「……口元のホクロって、セクシーですね」
――って、前から思ってた。
指でそこに、ちょこんと触れてみる。
「?!」
やめろ、とその手はすぐに振り払われた。
小野寺さんの顔が、少し歪む。
あれ……?もしかしてちょっと照れてる?
「ふふ、小野寺さんて、意外と可愛い」
いつもやられっぱなしだから、不意をついてやった!と嬉しくなって、思わず笑ってしまう。
あぁ、満足したら眠くなってきた……
小野寺さんが横から何か言ってるけど、今日はもうキャパオーバー。
閉じゆく瞼の裏に、小野寺さんのあの目尻の下がった笑顔が浮かんで。
待って、だから……
私には関係ないんだってば……。
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