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「な……んでいるんですか!直帰でしょ?」
「だから、本社から直帰してここ来てんだって」
「偏頭痛は?頭が痛いなら家で寝た方がいいじゃないですか」
……って、ホントに偏頭痛なら、だけど……
「お前、なんで突っかかってくんだよ。俺が居たらなんかマズイことでもあった?」
「……別に、ありませんけど」
ジトーッとした流し目の視線を躱すようにして、「ビールください!」とカウンターに向かって告げる。
「今日は飲み過ぎんなよ」
「っ、わ、わかってます!」
この間の醜態を思い出してしまって、つい声が裏返ってしまう。
カウンターから届いたジョッキに手を伸ばすと、横から小野寺さんが、手に持っていた自分のグラスを寄せた。
「今週もお疲れ」
チン、と小さく乾杯を交わす。
「お疲れさま、です……」
少し穏やかで優しげなその声に、思わず心臓が鳴り始めそうになって、かき消すように勢いよくビールをあおる。
「ぷは」
ジョッキの3分の1くらい一気飲みして、上唇の上に付いた泡をぺろっと舐めると、
「色気もクソもねーな」
呆れたように笑う小野寺さんが腕を伸ばしてきて、私の口の端についた泡の残りを、その手の甲で拭った。
「ちょっ……、簡単に触れてくるの止めてもらえません?!」
「はぁ?それ、こっちの台詞だっつーの」
「私がいつ小野寺さんに触れたんですか!」
「あ~そう、お前この間のお返しの意味、まじでわかってなかったんだ」
クスクスと笑われて、またこのやり取り!と苛立ちを覚える。
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