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凌輔が、情に脆いタイプだということはわかっていた。
流されやすい、お人好しな性格だということも、相手の気持ちを無下に出来ない奴だということも。
それはあいつの長所であって、短所でもある。
その事で、高校時代からの彼女、新木と揉めていたことも知っていた。
要は、俺はあいつの弱味に漬け込んだんだ。
彼女に別れ話を切り出されて、死ぬほど落ち込んでいた凌輔に。
自暴自棄になっていたあいつを、言葉巧みに誘ったのは俺だ。
向こうは半ばやけくそだと解っていても、身体から始まる関係に、ろくな結末はないと解っていても……
あいつが欲しかった。
どんな手段だってよかった。
俺と関係を持った翌日に、今まで頑なに応じなかった新木との別れ話に決着をつけたことを、俺は後から知った。
今思えば、バカなことしたよなぁと思う。
誰かを不幸にしてまで、なし崩し的に始まった付き合いに、歪みが生まれないはずがなかった。
――せっかく幸せになれたんだ。
もう俺になんて関わらないほうがいい。
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