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「今の車って、和泉様か。今日打ち合わせだったな」
「はい、無事に終わりました。可愛いお二人ですね!」
「そうな。彼女にベタ惚れだしな。新郎のお祖母さんの話は聞いたか?」
「あ、聞きました。足を悪くしてるから、デザートはビュッフェではなくてテーブルに配る形にしたいって。
あと新婦のお祖父さまも目の病気らしく、少し見えづらいということも気にされていたので、いっそのこと親族テーブルをお二人の近くにしたらどうかって提案したんです」
普通、新郎新婦のメインテーブルに近いのは、主賓の上司や友人テーブル。
親族は一番離れたテーブルになる。
だけどこんなにも家族思いのお二人には、こういうイレギュラーもアリじゃないかなと思ったのだ。
「あー……なるほど、それいいかも」
拳を顎にあてて一瞬考え込んだあと、チラリとこちらに視線を寄越した小野寺さん。
「盲点だったわ。やるじゃん」
口角を上げ、ふ、と笑う。
はぁ……。ほんっと、この人って。
仕事には厳しいけど、その分正しく評価して、認めてくれる。
信頼して、任せてくれる。
こういう何気ない一言が部下にとってどれだけ嬉しいか、どれだけやる気が出るかって、きっとこの人のことだから全部わかってるんだろう。
「……部下タラシめ」
「は?なんだそりゃ」
「なんでもないでーす」
小野寺 侑……
この男に弱点なんてあるのか?
完璧過ぎて、逆に怖い。
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