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理性と感情の狭間に
「おっ……もかった~……」
小野寺さんをベッドの上にドサリと横たえると、見供さんはイテテ……と腰を擦った。
私はベッドのサイドテーブルにイオン飲料や熱冷ましを置く。
見供さんが小野寺さんを運んでくれている間に、下のコンビニで買い込んできたものだ。
「見供さん、ありがとうございました」
「いやいや、こちらこそ巻き込んじゃってゴメンね!普段全然酒に酔わない奴だから、こんな風に他人に介抱されるの生まれて初めてなんじゃない、侑」
見供さんはクスクスと笑いながら、ふと時計に目をやる。
「ヤバ、そろそろ戻らないと。美沙緒ちゃんもタクシー呼んで早めに帰りな。
俺、店閉めたあとまたここに様子見に寄るから心配しないでね」
「あ……はい。そうします」
「じゃあ、ありがとうね!お疲れさま。帰り気を付けて」
見供さんは、足早に玄関を出ていく。
しんと静まり返った部屋のなかで、私はサイドテーブルの脇にしゃがみこんだ。
目の前に、辛そうに息を吐く小野寺さんの姿。
私は熱冷ましのシートを手に取ると、その額をそっと覆った。
小野寺さんは一瞬眉間にシワを寄せ「ん……」と小さく唸り、それからまた荒い呼吸を繰り返す。
ここ一時間ほどで、熱がぐんと上がってしまったらしい。いつもよりハイペースでお酒を飲んでいたこともあり、さすがに表情にも怠さが滲み出ている。
うなされているのか時折眉をひそめるけれど、それでも目を覚ます気配はない。
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