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Identity -Tasuku side-
バタンと玄関のドアが閉まる無機質な音がした。
家の中から、原田の気配が完全に消える。
「……にやってんだ……」
ぬくもりの消え失せた掌を呆然と眺めて、それからがしがしと前髪を掻き乱した。
目眩がするほどの頭痛と全身の気だるさに、無意識に舌打ちをしてしまう。
サイドテーブルへ視線を移すと、少し汗をかいたペットボトルのイオン飲料と、熱冷ましのシート、それから"energy charge"とロゴの入ったゼリー飲料。
テーブルの下に置かれたビニール袋の中にはまだいくつか中身が入っているようで、きっと原田が買ってきたものに違いなかった。
俺はペットボトルの中身を勢い任せにあおった。
半分ほど飲み干したペットボトルを、乱暴にサイドテーブルに放り投げる。
ゴトンと音をたててそれは床に落下して、虚しく転がった。
モノに当たっている自分に幻滅しながらも、このやり場のない感情を処理する方法など俺には他に到底思い付かなかった。
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