10341人が本棚に入れています
本棚に追加
/439ページ
上司として
「え……?…………と、転勤……ですか」
「あぁ」
――――まさに、青天の霹靂。
日曜日の夜の出来事を引きずって、私は仕事の会話以外ことごとく小野寺さんを避けてしまっていた。
閉館時間を過ぎた頃、人気の少ないスタッフルームでデスクワークしていた私は、小野寺さんから声を掛けられた。
「今、いい?ちょっと話がある」
声を聞いただけでどくどくと心臓が高鳴りだして、「……はい」と一言絞り出すのが精一杯だった。
仕事の話に決まってる。
それなのに。
連れてこられた場所は、ミーティングルームだった。
なんで?人前じゃ話せないの?
まさか一昨日の……?
そんなことが頭のなかを埋め尽くしていた私の前に、小野寺さんは一枚の封筒を差し出した。
「……え」
封筒の中の文書に目を通した私は、そのまま固まってしまった。
そこには、お行儀のよいパソコンの文字で、人事異動内示書とある。
4月1日付けで新館オープニングスタッフのチーフプランナーとして、期間限定の転勤を予告する内容が書かれていた。
場所は、隣県に5月に新規オープン予定の系列式場。
期間は、一年間。
手元に視線を落とした状態で言葉の出ない私に、同じく黙りこんでいた小野寺さんが話の口火を切った。
最初のコメントを投稿しよう!