上司として

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上司として

「え……?…………と、転勤……ですか」 「あぁ」 ――――まさに、青天の霹靂。 日曜日の夜の出来事を引きずって、私は仕事の会話以外ことごとく小野寺さんを避けてしまっていた。 閉館時間を過ぎた頃、人気の少ないスタッフルームでデスクワークしていた私は、小野寺さんから声を掛けられた。 「今、いい?ちょっと話がある」 声を聞いただけでどくどくと心臓が高鳴りだして、「……はい」と一言絞り出すのが精一杯だった。 仕事の話に決まってる。 それなのに。 連れてこられた場所は、ミーティングルームだった。 なんで?人前じゃ話せないの? まさか一昨日の……? そんなことが頭のなかを埋め尽くしていた私の前に、小野寺さんは一枚の封筒を差し出した。 「……え」 封筒の中の文書に目を通した私は、そのまま固まってしまった。 そこには、お行儀のよいパソコンの文字で、人事異動内示書とある。 4月1日付けで新館オープニングスタッフのチーフプランナーとして、期間限定の転勤を予告する内容が書かれていた。 場所は、隣県に5月に新規オープン予定の系列式場。 期間は、一年間。 手元に視線を落とした状態で言葉の出ない私に、同じく黙りこんでいた小野寺さんが話の口火を切った。
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