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ねぇどうして
――転勤の内示から2日後。
私は今、本社に居る。
3ヶ月に一度、全系列式場のチーフプランナーが集まって行われるチーフ会議。
10館ある会場のなかで一番チーフ歴の浅い私は、いまだに毎回緊張してしまう。
「原田さん、ご飯行こ~」
同県内の先輩チーフに誘ってもらって、本社の社員食堂でお昼ご飯を食べていると、スマホのバイブがメッセージを知らせた。
『夜、鈴の屋衣裳のじーさんと飯行くことになった。悪いけど、帰りに駅ナカでさかえ堂の豆大福を立て替えで買ってきてくれる?一応本社出るとき連絡よろしく。会議寝るなよ。 小野寺』
その文面に、思わず口元が緩んでしまった。
寝ないし……!
ってかまた会長のことじーさんって……。
「彼氏?」
向かいの席の先輩チーフにニヤニヤとした顔で眺められていることに気づいた私は、慌てて顔を取り繕ったけど、時すでに遅し。
「違いますよ!仕事の連絡です」
「へぇー?そんな顔してなかったけどなぁ」
いいな~!なんてからかわれてしまう。
正直、にやけてしまったのはもはや条件反射。
実際は、一昨日からずっと小野寺さんと微妙な距離を保ってしまう私がいた。
小野寺さんはいたっていつも通りで、それが救いでもあり、少し悲しくもあった。
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