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なんで、よりによってこの人に
決して好奇心なんかじゃない。
かといって、単純な興味でもない。
じゃあ、なんなんだって聞かれると、困るんだけど……
う~ん……と、腕を組んで小さく唸り声をあげてみる。
端から見たら完全に怪しい人だ。
そう、ここは『bar 味供』の入り口の前。
見供さんに聞いてみるとかコソコソしたことはしたくない。したくないんだけどさ……
小野寺さんは、周りに隙を見せない、プライベートが謎に包まれた人だった。
4年弱一緒に働いていて、社内報に載ってるプロフィールほどのことしか知らなかったことに、今更気づく。
出身校も、サックスをやっていたことも、恋人はいないことも、同性愛者だということも。
小野寺さんのこと、私今まで何も知らなかったんだ。
苦手!合わない!ホント意味不明!なに考えてるかわからない!……って思うのに。
我関せずでいた方がお互いにとっていいのは、百も承知なのに。
私、なんでここにいるんだろ。
ここは、小野寺さんが唯一仕事以外の顔を覗かせた場所だから…………
カチャ
「わ!」
「あっ、やっぱり。いらっしゃい」
うろうろと入り口の前を往復していると、急に向こう側からドアが開いて、見供さんが顔を出した。
「窓の陰からチラチラ誰か見えるなと思ったら、美沙緒ちゃんだったか。どうしたの、入らないの?」
「は、いります……」
おずおずと足を中に進めると、さぁさぁ座りなよ、と背中を押される。
「ちょうど、侑も来たとこだからさ」
「えっ!!?」
「げ、原田」
嘘でしょ……!
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