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人類が火星への入植を開始して二十年近くが経つ。初めは高度な訓練を受けた専門家だけだったが、ここ数年で民間人の入植も増えてきた。いや、強制的に移住させられていると言う方が適切だろう。
2000年代に入り、地球の人口爆発に伴う住宅不足や食糧難が現実味を帯び始めたことから、火星の地下空間に居住区を作り、入植するプロジェクトが推し進められた。国際機関や民間の企業により一通り生活できる環境が整えられた後、世界各国が協力し、抽選で選ばれた家族を火星に移住させる施策が始まった。指名を拒否することはできず、強制的に火星に送られることとなる。そして原則的に帰ってくることはできない。
火星ではいずれ地表にも人が住めるよう、テラフォーミングの作業が進められている。火星に送られた人々はそういった仕事に就くか、食料の生産や加工などに従事する、あるいは自らの得意分野を活かして働くことになっている。そのせいか、強制労働のようなイメージを持っている人も少なくないという。
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