5人が本棚に入れています
本棚に追加
朝が来た。
遺跡は静けさに包まれていたが、ゴーレムの破片が生々しく積みあがっているのを見るたび、あれは夢ではなかったと認識させられる。
「なあ、ギルダ」
「何だい?」
イリスは荷支度をするギルダを見やる。
「その剣、どこで手に入れたんだ?」
「ここだよ。岩から生えてたのを抜いたんだ」
「岩から?」
「うん。英雄の聖剣ヴァルフリートがここにあるってのは一部で有名な話で。でも誰一人として抜けなかったんだってさ。アタシが手をかけたらするっと取れたけどね」
「そうか……」
イリスは思う。彼女がケイリンの言うところの『然るべき人』なのかと。良く分からないと思う反面、そうかも知れないとも思う。少なくとも、かつての自分の愛剣は認めたわけだ。
彼女が振り返り、笑う。
「さ、行こうか」
「どこへ?」
「とりあえず、近場の町かねぇ。アンタの服だのなんだの、必要なものを揃えなきゃいけないだろ?」
「でも、オレ持ち合わせなんか……」
「バカだね、アンタ」
ギルダは明るい表情でカラカラと笑った。
「これも何かの縁だ。アンタの面倒はしばらくアタシが看るよ。女同士、気にしなさんな」
「オレ、自分では男だと思ってるんだけど」
「でも外見は女だろう? まあ、なんだか良くわからないけど、あんまり気にしなさんな」
最初のコメントを投稿しよう!