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ギルダの明るさには驚かされるが、救われている部分もあると認識しないわけにはいかない。
「あんた、お人好しって言われない?」
イリスが尋ねると、ギルダは首を振った。
「これでも業界では強面の部類に入るんだよ。アンタはそうさね、特別枠ってとこかな」
この呪われた場所で自分は命を救われたことがある、ギルダは軽い調子でそう続けた。
「この剣を構えた剣士と、魔法使いの二人組だったね。名前は知らないけれど、あの人たちの背中は今でもはっきり覚えてる。魔物に八つ裂きにされかけたアタシを助けてくれたときの、あの姿は……。だからアタシは、この場所で困っているヤツがいたら、問答無用で助けることにしてるんだ。それが名も知らないあの人たちへの恩返しだと思うから」
ふとギルダが首を傾げる。
「おや、どうかしたかい?」
「いや……今日は、良い天気になりそうだなと思って」
そうだね、と頷いて前を向くギルダから隠れるように、イリスは目元をこすった。
いつか、元の姿に戻る日が来たら、自分は彼女に名乗れるだろうか。
そうありたい、と思う。その時はきっと、ケイリンも一緒だ。二人で彼女を驚かせてやろう。
イリスは微笑み、一歩を踏み出した。
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