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父はしぶしぶながら私を連れて、弘徽殿に上がった。
私は尼削ぎの髪につけられたかもじが重たくて首が痛かった。檜扇で顔を隠しなさいと言われていたのもすっかり忘れていた。
右近衛権中将だと言われた人は大変なおじいさんで、こんなおじいさんなのに権中将に蔵人なんて忙しそうな役をさせられるのはかわいそうだな、と思った。
御簾の奥に鎮座されておられる弘徽殿の、東宮(生母の)女御さまは、大変お美しい険のない方なのが、御簾の外からも窺い知れた。
そのすぐ側に控えた童がこれがまた可愛らしく、この方が東宮かと思ったら、実は東宮の従弟にあたる堀川の大臣の太郎君だった。
私が目を奪われたのは、別の方。
その脇に控えておられた父子である。
「兵部卿の宮」と父に語りかけたおじさんがいて、父は「中務」と答えかけて「式部卿の兄宮」と言い直した。最近中務卿から式部卿に昇進なさった、父の異兄宮である。当代の親王の筆頭、小松の宮がこの方。親王のつく役職は形ばかりのものではあるが、兵部卿、中務卿、式部卿、と順に位が上がる。
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