妊娠

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妊娠

生活指導日から数か月が過ぎたある暑い日。 近々文化祭が開催されるため、その準備に各クラス大忙しだ。 桃のクラスは喫茶店を出すと聞いている。 クラスの女子が衣装作成で被服室へ走っているのを見かけた。 そんな時、桃がクラスの男子五人と歩いている姿を見た。 ちゃんとクラスに溶け込んで仲良くしているんだなぁとか呑気に思っていた。 それから数時間が経ち、完全下校時間が来た。 文化祭前日には泊まり込みで最終仕上げをすることも許可が下りる。 しかし、今日は文化祭まではまだ日にちがあるので、通常通りの下校だ。 今日は保が鍵閉め当番のため校内を巡回していた時だった。 たまたま通りかかった桃のクラスにまだ桃の荷物があることに気づいた。 あれからだいぶ時間が経ち、完全下校時間を当に過ぎ、生徒が校内にいるはずなかった。 にもかかわらず、荷物があるということは、まだ校内にいる。 (どういうことだ?) 保は嫌な予感がしていた。 鍵閉めは後回しにして桃を探すために校内を走る。 すると、先程桃と一緒に歩いていた男子集団を発見した。 声をかけようとした時、あり得ない言葉を聞いた。 『いやぁ、オメガってあんなにすごいんだな』 『あのフェロモンにやられたら誰だって理性なくすわ』 『溜まってたモン、全部ぶちまけてスッキリした』 『お前、出しすぎなんだよ』 『あいつ、このこと誰にも言わねーよな』 『この写真あるから大丈夫だって』 『動画もあるぞ』 『マジかよ』 『いつの間に動画なんか撮ってたんだよ』 『あとで楽しむ用にな』 ゲラゲラと笑いながら連中は帰って行った。 保は連中が来た方へ全速力で走った。 向かった先は行き止まりで、その場所は体育倉庫。 倉庫に近づくにつれて、どんどん甘い匂いが強くなる。 保は嫌な予感がして、水を自動販売機で購入し、倉庫の扉を開けた。
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