日常

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辺りを探していると、外の薔薇の垣根に隠れていた。 近づくと桃は泣いていた。 保ですらまともに言い返せない相手を相手にしたのだ。 怖くないはずがない。こんな小さな女の子が。 そっと近づくと桃は泣き腫らした目で振り返った。 「あっ、さっきのお兄ちゃん」 「さっきは助けてくれて、ありがとう。怖かったね。ごめんね」 優しく抱きしめると、桃は安心したように身を預けてきて泣きじゃくった。 しばらく抱きしめていると、規則正しい呼吸が聞こえてきた。 桃の顔を覗くと、寝ていた。泣き疲れてしまったのだろう。 静かに抱き上げて、桜井家の執事に引き渡した。 『桃お嬢様がお世話になりました』 少女が『桃』と言う名前であること、勇気があり、勇敢な行動を取ってしまうが、人がいる前では泣くこともできない意地っ張りなこと、短い時間ではあったが、保は本能的にこの少女に惹かれていることに気付いた。 保は絶対にこの少女を守ると心に決めた。 それからずっと少女と一緒にいられることを考え、学校でなら一緒にいられる時間があると思い、教師になることにした。 なぜ養護教諭なのかはご想像にお任せしよう。
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