日常

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いつもそうだ。 桃は保のことを嫌っている。 見つけるたびに服装についてばかり叱責しているから。 校門で、移動教室中の廊下で、授業をサボっていた屋上で…。 校内で会わなかった所はないのではないか。 他の先生からは何も言われない。いつもうるさく言ってくるのは保だけだった。 今日もいつものように桃を探して校内を歩いていると、屋上で見つけた。 今は授業中である。 それなのに、屋上にいるということは、サボリだ。 「おい、桜井」 「げっ…久世…」 「今授業中だろ?」 「授業つまんないからここで昼寝してる」 「学生の本分は学業だろ」 「別に来たくて来てるわけじゃない」 「親御さんに学費払ってもらってる立場なんだからちゃんと授業くらい出ろ」 「うるさいなっ!」 「怒るなよ」 「親のことなんて関係ないだろっ!」 「未成年なんだから仕方ないだろ」 「そうやって大人はすぐ子供扱いする」 「実際桜井は子供だしな」 「マジで久世ウザい」 「桜井に嫌われてるのは知ってるさ」 「じゃぁ構うなよっ!」 「構うさ」 「何でだよ?」 「桜井が俺の言うこと聞かないから」 「本当にマジでそういうのウザいから」 桃は怒ってどこかに行ってしまった。 保が口うるさく桃の服装について言っているのは、桃が魅力的すぎるからだ。 男子生徒が桃を性的対象として見ていることは一目瞭然だった。 短いスカート、派手なピアス、明るい色の茶髪。 男子生徒でなくても目を引く。教師の間でも桃を性的対象として見ている奴もいると聞く。 それだけ、目立っているから、少しでも肌を隠してもらいたかった。 オメガだから、いつ来るか分からない発情期。 学校で発情期が来たら、どこにいるか分からないからすぐに助けられるか分からない。 だから、なるべく目立たないように大人しくしててもらいたいのが保の本音であった。 一応、保健室には桃が通院している病院から処方されているのと同じ抑制剤を常備している。 保自身も常に持ち歩いている。保健室以外で桃の発情期に対応できるようにである。
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