藤堂平助からの恋文

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藤堂平助からの恋文

「ふふー。ようけ満喫したわあ。 」 千香は帰宅後、幕末の史料本を広げながらにやついていた。 「斎藤さんかっこええよねえ。今日はどこ読もかな〜、ってあれ。何この手紙。 」 パラパラと史料本を捲っていると、古ぼけた和紙が出てきた。裏から墨で文字を書いた跡が見えたので、誰かからの手紙だと気づいたが、自分が書いた記憶が無く、他に心当たりもなかった。 「どれどれ、あいらぶきゆう、『私は貴方を好きです』...これぎり書いとる。よっぽど好きな人でもおったんだろか。名前も書いとる。宛名も。 」 その瞬間千香は目を見開いて、固まった。 「え、え。千香へ...?藤堂、平助?...嘘だろ。怖い。誰かの悪戯だろ!ほうよ。手紙書く訳なかろ。会うたこともないのに。第一、幕末の人から手紙やか来る訳なかろ。 」 新手のストーカーというやつだろうか。今まで千香は所謂ストーカー被害に遭ったことがなかったため、余計に心配になった。 「でも、この色褪せ具合、墨の匂いと言い、幕末の手紙言うてもほんまかもしれん。でも、藤堂平助が英語の勉強しよったことを知っとる悪質な人が書いた手紙かもしれんし。うーむ。 」 千香は頭を抱えてしまった。
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