進路

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高校生活も残り少なくなった。クラスメイトたちもそれぞれの進路に向かって進み始めている。未だに進路の決まっていない千香は、今日も今日とて担任に呼び出しを受けていた。これは、千香がまだ幕末にはまって間もない頃のお話。 「森宮さん、進路どうしますか。 」 「ええと、とりあえず東京が良いです。 」 担任の若干面倒くささの混じった目を見て、千香はなんとなくぼんやりと考えていたことを答えた。それに少し担任はホッとした様で、 「分かりました。...で、どこの大学とか専門学校とか目星はついてますか。 」 「特に決めてはいません。でも、授業で習わない様な歴史を学びたいです。専門的な分野の。 」 「歴史かあ。いっぱいあるからなあ。ある程度選んでもらわんと、僕としても言い様が無いよ。 」 担任は腕を組み、大きくため息を吐いた。それもそのはず。自分の担任しているクラスで進路が決まっていないのは、千香だけだからだ。 「私、母と姉が保育士なんです。母はやりたいこと決まらんのんやったら、保育士の資格が取れる大学に行かんかいって言ってました。私も、結構子ども好きですし、それに国家資格やし、もっとって損は無いかなって思います。 」 いい加減千香も、毎日昼休みや放課後に担任と膝を付き合わせるのには飽き飽きしていたため、話を終わらせ様と妥協した。まあ、この進路では少なくとも保育の歴史は学べるだろうし、幼い頃から母の背中を見て育っているので、ある程度の素地もある。 「保育士ね。分かった。ほんなら、今日は金曜日やけんまた月曜日の森宮さんの空いとる時間にここ来て。出来たら学校も候補絞ってきてくれたら助かります。 」 「分かりました。それでは、失礼しました。 」 そうして千香は席を立ち、礼をして教室を出た。
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