進路

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いやいやいや。古谷はクラスの室長の美咲と噂があったではないか。本人たちも否定していなかったし、クラスメイトも認知していた。ともすればもし古谷の自分に対する感情が本物ならこれは二股というものになる。そんなものに巻き込まれるなど、たまったものではない。クラスの中心メンバーの怒りをかっては、平穏無事に高校生活を完遂出来ないのは必死である。 「古谷さあ、美咲ちゃんっていう可愛い彼女おんやけんさ。大事にしたげないかんよ。余所見やかせられん。 」 「あいつとはそういう間柄やない。 」 頬を赤く染め古谷は目を逸らしたまま、返す。千香は大きく瞠目した。 「...ほんなら、ほんまに本気でいよるってこと? 」 「ほうよ。本気。 」 これは、夢だろうか。頬をつねってみるも、目は覚めず。一度目を閉じて深呼吸の後目を開けるも、どうやら現実の様である。 「私、古谷とは付き合えん。進路もまだちゃんと決まってないし、それに、 」 「じゃあ、進路が決まったら可能性があるっていうことか。よし、千香さん。早よ決めてんよ。ほんなら俺、練習戻るわ。 」 満面の笑顔を浮かべ、小さくガッツポーズをしたまま古谷は踵を返してグラウンドへと向かって行ってしまった。 「人の話は最後まで聞こや...。こりゃあ、明日から大変そうなね。 」 小さくなった背中に声をかけても届くはずはなく。呆れと驚きで何故だか笑えてきた。 「なんか、青春って感じやね。卒業間近になって今更実感するとかやばいね。 」 いつもどこか自分のことになると現実味を帯びない。全くと言って、他人事の様に考えてしまうのである。
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