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ヒカルとレイは紙袋を漁り、お婆ちゃんの半生をつづったエッセイを見つけた。
昔作家を目指していたお婆ちゃんが自費出版したもので、十五冊からなる長編だ。
「うへぇ、長いなあ」
ヒカルは舌を出した。
「半分こしよう。俺は大人になってからの部分を読むから、レイはお婆ちゃんの子供のころの部分を読むんだ」
二人はお婆さんのエッセイを読み始めた。
レイは呟く。
「それにしてもおばあちゃんって、ぼくにそっくりだなあ」
お婆さんの小さいころの体験を読むと、内気であまり友達がおらず、本ばかり読んでいたことが書かれている。それは、今のレイそっくりだった。
しかも、そこに書かれているお婆さんのお気に入りの本は、レイが好きなものばかりだった。まさかお婆さんとこんなに好みまで似ているなんて!
レイは、書かれている本の名前の中で、読んだことの無いものを全てメモした。
かなりの量があるので、全部読み切るにはかなりの時間がかかるだろう。でも、絶対全部読んでやろう。
「おばあちゃんの文、読みやすいなあ」
ヒカルも、感心したように呟く。お婆ちゃんの文は、平易で簡潔。リズムがよく、すらすら読める。中身もちゃんとしていてエッセイとしての完成度も高い。
特に、お爺さんであるアメリカ人の夫との出会いの話なんか実に面白く、ラブストーリーとして映画になってもいいくらいだ。
ヒカルは、お爺さんが外国人だということは知っていたが、自分が生まれる前に死んでしまったし、自分の顔が純和風だということもあり、全くピンときていなかった。
しかし、お婆さんのエッセイを読むと、こういう人なんだ、と胸がわくわくした。アメリカ空軍のパイロットで、星が好きで、宇宙に関する本をたくさん読んでいた。そんなこと、今まで知らなかった。
ヒカルは、空軍のジャケットを着て屋根裏部屋に上り、星空を見上げる若きパイロットの姿に思いをはせた。
「あっ!」
ヒカルが声を上げた。
「レイ、ここ読んでみてよ!」
そこには『名もなき白き本』をお婆さんがお爺さんから貰ったことが書かれていた。
「この本は、おじいさんから貰ったものだったのか」
ようやく本の手がかりが掴めそうだ。
だが前後をぱらぱらと見ても、本の中身については一切触れられていない。
「こうなったら、今度はおじいさんについて調べてみるしかないか」
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