もしも、空が落ちてきたら

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「まぁ、そしたら、俺達は皆で死んで終わりだろうな。空なんて大きなものに対処は出来ないだろうし」  そして、さっぱり回答する。  長屋くんは、いつもこうだ。怒っている時でさえニコニコしていて、且つ飄々としている。 「怖くないの?」 「うーん、怖くないことはないけど、怯えるほどではないかな」  恐らく、隣席でなければ挨拶すらしないタイプの二人だろう。 「強いのね。落ちてこないって分かった上じゃ話にならないって……?」  水谷さんは、思う所があるのか小さく溜め息を吐いた。対して、長屋くんはケロッとした顔をしている。  表情からも、考えの基礎部分が違うのは明白だ。 「ううん、そういうことじゃないけど。今日はどうしたの?」  だが、そんな二人だからこそ通ずる物があるのだろう。長屋くんは、水谷さんに優しく問い掛けていた。  水谷さんは水谷さんで、特別な反応なしに答える。 「空が落ちるなんて、今でこそ有り得ないって分かるでしょう。でも、昔の人は落ちてくるかもしれないって信じて怖がっていたんだって。それが何だか不思議で」  何があったのか説明した水谷さんの言葉に、長屋くんはうんうん頷いた。  そもそも、なぜそこに至ったのか――との突っ込みは、彼の中には存在しないようだ。 「もしも私がその時代に生きていたら、常に怯えていたと思うのよ」 「そっかー」  こういう会話が、二人の間ではよく交わされる。私は、聞いているだけで交わろうと思ったことはないが。  いや、交ざらないのではなく、多分交ざれない。  きっと、これらの会話は二人だからこそ成立するのだから――。
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