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話し合いに終止符が打たれたかと思った矢先、長屋くんが口を開いた。
「……でもさ、俺思うんだけど、それは今も変わらないんじゃないかな」
水谷さんの表情は、相変わらず変化しない。
「あ、怖がらせようって訳じゃなくてね」
だが、長屋くんには彼女の変化が見えたのだろう。深い笑みをかけていた。
後ろの人間まで巻き込んでいるとは露知らず、長屋くんは続ける。
「地震や火事だって急に来る。明日、事故に遭って死ぬかもしれない。空ほど大きくはなくても、いつ何が起こるか分からないのは一緒だよ」
なるほど。と、蚊帳の外でありながら感心してしまった。水谷さんさんも今ごろ驚いて――いるかは、やっぱり分からなかった。
「結局、怖がっていても意味なんてないんだ。来る時は来るし、来ない時は来ない。それなら、俺は今やりたいことは出来るだけやって楽しみたいと思う」
一息吐いた長屋くんに、水谷さんは何も言わなかった。言葉を失っているようにも見えるが、今まで見てきた経験上、そうではない。
「あ、もちろん人に迷惑を書けない程度にね」
清々しいほどの笑みを湛えた長屋くんは、続けざまに驚く程の大声を上げた。
「だからさ、空が蓋でもきっと俺の生き方は変わらないよ!」
水谷さんは、普通の反応として目を真ん丸にした。しかし、引く様子はない。
「…………なるほど、賢いのね……」
寧ろ、感心を表明していた。
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